2014年11月8日土曜日
「右こゆび、第一関節のきず」
幼い頃の記憶は、ほとんどが曖昧だ。
今までに見てきた膨大な夢や、過去のあらゆる出来事で生まれた強烈な感情の爆発、
はたまた、映画や本の中で出会ってきた感傷などによって、いともたやすくその記憶は改ざんされていく。
私の右こゆびにある、そのきずは、私の記憶では二つの不運によって、一生傷(イッショウキズ)となった。
一つ目は、補助付き自転車(または三輪車だったか)に乗ったままの状態で横に転んだ時についたものだ。
小指をコンクリートの地面にしたたか擦り付けるような形で地面に倒れた私は、痛さというより
「転んだ」という衝撃と「悲しい」という感情の捌け口を探すかのように延々と泣き続けた。
母親は4つ下の弟を妊娠中で、絶対安静の状態だった。
いつもは働きに出ている母親が家にいるのが嬉しくてはしゃいでいたのかもしれない。
茨城の田舎から祖母も来てくれていたのではなかったか。
養護教諭をしていた母は動じることもなく、手早く止血し手当を終えた。
記憶にあるのは、大きなお腹とその頃住んでいた長屋のようなアパート。
さて、二つ目の不注意は、治りかけのそのきずに、ハムエッグを押し付け火傷したことである。
持ち上げた熱々のハムエッグに、右こゆびの第一関節が触れた。
びっくりして、私はまた泣いた。
今考えると、ほとほと「?」な謎の状況だが、私の記憶ではそうなっているのだ。
結果、今年30になる私の右こゆび、第一関節は、肉が盛り上がったような不思議な形をしている。
曖昧な記憶の中にある、不確かな原因によって、私の小指は確実にちょっと変な見た目なのである。
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